自筆証書遺言

遺産相続, 遺言書

遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして作成する遺言書です。

紙とペン、印鑑があれば誰でも作成でき、特別な手続きも不要なため、手軽な遺言方法です。

遺言書の作成を考え始める

テレビやラジオ、雑誌やインターネット、その他周囲の親族や友人知人から、将来の遺産相続の話、どなたであっても一度や二度、耳にされたことあるのではないかと。

40代や50代では全く気にしなかった。定年後はゆっくりしたくて自分の死んだ後なんてイメージしてなかった。気持ちも身体も考え方も、まだまだ若いと自分は思っている。

ローンで買った土地や建物も退職金で完済し、不動産は自分のものになったけど、年金もらってても貯金なんて生活費に取り崩すし、財産なんて対して遺らないだろう・・・

だから遺言なんてね・・・

そんな中、同世代が病気になって入院や通院を繰り返していたけど、挙げ句には急に亡くなった。あっという間だった。

隣では毎日のようにデイサービスの車が来て、車椅子のままワゴン車に乗り降りしている。その家族は高齢の親の介護で大変そうだ。

ギャンブルなど浪費癖の酷い子どもが、父が死んだ後「自分の分はもっと寄こせ」と、母や兄弟姉妹に食って掛かっているらしい・・・

お父さんが生きてる間も、絶え間なくお金の無心に来て、渡さないと帰らないようだった。お母さんも兄弟姉妹も気の毒に・・・

 

平穏な日々が続いていると、考えすらしなかったことが、周りで相続などに関わる色んな出来事を見聞きすると、今までゼロだった関心も、そうではなくなっていくのかもしれません。

そんなとき、最初に目につくのが、どうやら遺言書のようです。

中でも、大風呂敷でなく、こじんまりと自分だけで書いてしまえるような遺言書(自筆証書【じひつしょうしょ】遺言)に、大半の方は関心を示すようです。

 

率直な所、行政書士という専門家である私の目線から見ても、自筆証書で遺言を作成するのは良い考えだと思います。

巷では、書くのはいいけど「こういう不安がある」「こういうことは防げない」「書き方間違える人が多い」など、少し否定的な内容を目にすることもあります。

そういった指摘は確かに間違っては無いのですが、例えそうであっても、あなた自身がせっかく自分の将来の相続について意識し始めたわけですから、出来るところまで調べて作ってみるのは、やはり良い考えと言えます。

遺言書の見本を見てみる

冒頭でも触れた通り、自筆証書遺言とは「原則として、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を手書きして作成します(※不動産登記事項証明書や預金通帳のコピーがあれば、財産部分は自書しなくてもいい)」。

ただ、自宅で簡単に書けそうではあるものの、「原則として、全文自筆」の部分は、なかなかプレッシャーを感じる所でしょう。

今の時代、インターネットも普及していますから、WEB上にも自筆証書遺言について膨大な数の雛形がアップされています。

そこから好みのものを見つけて使用するのも一考です。

取り急ぎ、ここでも、下記に雛形の一例を載せておきました。

遺言書の雛形はこんな感じ

(以下雛形:相続人は長男と二男の2名と仮定したものです。遺留分については触れておりませんのであらかじめご留意ください)

遺言書

遺言者千葉帯之は、以下の通り遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、長男〇〇に相続させる。

【土 地】

所 在 宮城県仙台市宮城野区・・・・

地 番 ーーーー

地 目 宅 地

地 積 ーーーー

【建 物】

所 在 宮城県仙台市宮城野区・・・・

家屋番号 ーーーー

種 類 ーーーー

構 造 ーーーー

床面積 ーーーー

※ーーーーの部分は、毎年4月に来る固定資産税納通知書を参照するか、または市区町村役場で資産証明(公課証明)もしくは法務局で登記事項証明書を取得されれば記載事項が確認できます。

第2条 遺言者は、遺言者の有する下記の財産を、二男〇〇に相続させる。

(1) 預 金

【〇〇銀行 〇〇支店 普通口座】

口座番号ーーーー

口座名義 千葉帯之(チバタテユキ)

【△△銀行 △△支店 普通口座】

口座番号ーーーー

口座名義 千葉帯之(チバタテユキ)

(2)その他相続人が相続時に所有する前条以外の一切の財産

第3条 遺言者の死亡と同時若しくは遺言者の死亡以前に遺言者の二男〇〇が死亡した場合は、第1条記載の財産すべてを長男〇〇に相続させる。

第4条 遺言者の死亡と同時若しくは遺言者の死亡以前に遺言者の長男〇〇が死亡した場合は、第2条記載の財産すべてを遺言者の長男〇〇に相続させる。

第5条 遺言者の死亡と同時若しくは死亡以前に、遺言者の長男〇〇、二男〇〇が、いずれも死亡した場合は、第1条ならびに第2条記載の財産は、遺言者の相続発生時における法定相続人において行う遺産分割協議で各相続人の相続分を決定する。

第6条 遺言者は次の者を遺言執行者に指定する。

住 所 宮城県仙台市宮城野区ーーーー

氏 名 ーーーー【遺言者との続柄:長男】

生年月日 昭和ーーーーーーーー

第7条 遺言者は、遺言執行者〇〇が、第三者に対してその任務を全面的に行わせる権限を付与する。

第8条 遺言執行者の選任の時において、第6条の者が死亡その他の事由で遺言執行者の任務を遂行できない場合、遺言者の相続発生時における法定相続人において協議し、第1条から第2条までの遺言の執行を行う。

第9条 第2条の財産を相続した者は、遺言者の3回忌に至るまでの祭祀法要に関わる費用を負担することとする。

付言事項

ーーーーーーー

 

令和ーーーーーー

遺言者 千葉帯之 印

 

以上雛形終了
ーーーーーーーーーーーーーー

以上が、全て手書きする場合に必要な必須・任意の各記載内容です。

ちなみに、第1条と第2条ならびに文末の署名押印・日付のところは必須(必ず書く)。その他の第3条〜第9条は任意(書いておいたほうがハッキリするけど、書かなければダメというものではない)。  「・・・・」「ーーーー」「〇〇 △△」の部分は、ご自身で調べないと書けませんが、それ以外は基本的内容です。

パソコンで財産目録などを作成すれば自書がいらない

上記雛形の中の、第1条の不動産や、第2条の預金通帳などは、

①財産の証明が可能な書類の写し(不動産登記事項証明書や預金通帳のコピーなど)を添付する

②パソコンで作成した財産の一覧表(財産目録)を作って印刷したもの

上記の①または②(※両方でも差し支えありません)の方法を取ることも出来ます。

そして、これら①②の方法を選んだときは、全てのページに遺言者による署名と捺印をすれば、財産に関する内容を自書しなくても良くなるのです。

自筆証書遺言を作るときのルール

遺言者本人が原則として全文を自筆で書く

作成した日付を正確に自筆で書く

氏名を自筆で書き、印鑑を押す

訂正は印を押し、欄外にどこを訂正したかを書いて署名する

遺言で効力があるのは「相続」「財産」「身分」の事柄のみ

自分の思いは「付言事項」として最後に書く

自筆証書遺言を作成する際は、次の点に注意しましょう

代筆やワープロ、点字や動画などは一切認められません。

筆記具は消せる鉛筆などではなく、ボールペンや万年筆を使用しましょう(黒色が好ましい)。
日付は「2024年11月吉日」などあいまいな表現ではなく、正確な年月日を記入しましょう。
訂正には厳格なルールがありますので、可能な限り訂正しないように、清書前に下書きをしておきましょう。
遺言書を有効とするには「管轄法務局への保管」または「管轄家庭裁判所での検認」が必要になります。

自筆証書遺言のために揃える書類の例

(財産関係)

遺言者名義の預金通帳のコピー
不動産の登記事項証明書
金融商品や投資信託、株式・社債の証書・証券のコピー
その他相続財産となりうるものの証明可能な書類など
財産の一覧表をパソコンで作って印刷したもの(財産目録)

(人【遺言者】)

遺言者の出生から遺言書作成時までの戸除籍謄本
※その理由は相続開始後に、家庭裁判所で検認(※後述します)を受けるときや、法務局に保管していた遺言書の証明(※後述します)を受けるときに必要だからです。

戸除籍謄本の取得の仕方

令和6年3月1日からは、遺言者ご本人が最寄りの役場に直接行けば、本籍地が違う市区町村の戸除籍をお住まいの役場で取ることが出来るようになりました(一部、出来ないものもあるようなので、最寄りの役場にご相談下さい)。代理人(弁護士や司法書士・行政書士など)や郵送での対応は一切していないこと、ならびに、当日にすべて交付されない場合もあることにご注意下さい。

相続発生後のこと

相続発生後は
遺言者の除籍謄本と住民除票(※どちらも、遺言者が亡くなって死亡届提出後、1週間から2週間程度で死亡した旨の記載がされたもの)

相続人全員の戸籍謄本・住民票(遺言者が亡くなった後の日付で交付を受けること)

相続人全員の印鑑登録証明書(手続きで必要になったことがハッキリ分かってから取得してください)

例えば交付から3ヶ月以内など、特に銀行などでは相続手続き開始段階を基準に「何ヶ月以内に交付された印鑑登録証明」と言われることが殆です。印鑑登録証明書の取得は、「いつ頃(1ヶ月後とか2ヶ月後など)・どこに(例:法務局、A銀行、B銀行、生命保険会社C)・何通(例:法務局に1,A銀行に1、B銀行に1で合計3通、生命保険Cの受取人だけプラス1通)」など、手続きの見通しなどが明確になってきてから取得しましょう。

なお、死亡届を持って戸籍に死亡の記載(戸籍から除かれる=除籍)され、住民票に住所を置いていた住民ではなくなり(住民票から除かれる=住民除票)、住民でなくなった方は印鑑登録証明書も喪失しますので、除籍・除票となった時点で、遺言者の印鑑登録証明書は一切の効力を失います(取得もできなくなり、手元にあるものも使用する機会・目的もなくなります)。

① 自宅で保管しているときは、家庭裁判所での検認(けんにん)が必要

遺言書を自宅等で保管していた場合、何もせずに遺言書をそのまま銀行に持参しても預金を相続することは出来ませんし、法務局に持っていっても不動産の名義変更はできません。ではどうすれば遺言書を使って相続手続きが出来るかと言うと、最寄りの家庭裁判所へ「検認(けんにん)」の申立てという手続きを行う必要があります。

遺言者が亡くなったら、まずは管轄する家庭裁判所へ電話して「親が亡くなって、自身で書いていた遺言書がある。どうしたらいいか?」と問合せてみましょう。後述の流れを適切に教えてくれるはずです。

遺言書検認の申立

※相続発生後の話です

パソコンやプリンターの設備が整っている方は、下記の裁判所のサイトから申立書を印刷することが出来ます(※記載方法はURL内にてご確認ください)。

もしくは、家庭裁判所まで行って「検認の申立書が欲しい」と申し出ることもできます。

相続発生後、この申立書に必要事項を記載したら、それとともに、亡くなった方(遺言者)の出生〜死亡までのすべての戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本(遺言者や相続人の戸籍謄本をすべて揃えた後(前述したように、生前に出生から死亡前までのものを揃えておくと、このとき時間短縮に繋がります)、法務局で「法定相続情報一覧図」というものを取得しておくと、戸籍の束に代えて、その一覧図を提出することも可能ですhttps://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html)、当事者目録、収入印紙(遺言書1通につき800円分:コンビニや郵便局で購入してください。400円のを2枚とかでも大丈夫です)、連絡用の郵便切手(110円×必要人数分)を同封し、最寄りの家庭裁判所窓口へ提出するか、または、郵送で送ることも出来ます。このとき遺言書そのものは同封しないように気をつけてください。

家庭裁判所に提出した書類は基本的に返ってきません。したがって、戸籍謄本などについては、事前に全てをコピーしておき、原本とコピーどちらも提出しつつ、「原本は返してほしい」と口添えやメモ書き同封などしておきましょう。この場合も先に触れた、「法定相続情報一覧図」があれば、それを提出するだけで済みます。なお、「法定相続情報一覧図」は、無料で何枚でも交付を受けることができますので、一度調べてみてもよいでしょう。

申立書等一式を提出後概ね1ヶ月前後で、
「◯月◯日の△時に検認手続をしますので、次の持ち物を持参して来所してください」といった連絡が来ます。当日は、遺言書の原本を保管している人は必ず、他の相続人は任意で出頭します(極端に言うと、代表者1人だけで問題ありません)。期間の目安ですが、書類提出から最初の連絡まで1ヶ月前後・連絡から検認日まで1ヶ月前後、合計すると、書類提出から2ヶ月前後の期間を要します。問題なく終了すると「検認済」という印が押されます。

まずは、遺言者が亡くなったら、管轄する家庭裁判所へ電話して「親が亡くなって、自身で書いていた遺言書がある。どうしたらいいか?」と問合せてみましょう。前述の流れを適切に教えてくれるはずです。

検認後の遺言書で手続きをする

「検認済」の遺言書になったら、次は財産を相続する手続きをするため、銀行や法務局に行くことになるでしょう。

不動産手続きも、銀行の手続きも、その殆どで、検認済みの遺言書、戸籍の束または法定相続情報一覧図、その他住民票や印鑑登録証明書が必要となります。

専門家目線で申し上げると

戸籍謄本や住民票の「束」のままだと、例えばA銀行で戸籍全てをチェックするのにその日に終わらない、B銀行でも同じように終わらない・・・いつまで経っても不動産の名義を変えられない・・・という事態も考えられますから、すべての窓口に法定相続情報一覧図を提出できるのが理想かと思います。

手順としては
亡くなった→戸除籍(できれば住民票や住民除票も)をすべて揃える→法務局で法定相続情報一覧図を20枚ほど取得する→家庭裁判所へ法定相続一覧図含め最初の書類を提出して検認の申立て→検認済

その後20枚取得したうちの残り19枚の法定相続情報一覧図・検認済みの遺言書を用い、法務局への不動産名義変更、各銀行・金融商品などの相続手続きを同時に行うのが効率的かと思います(やはり、生前に出生から死亡する前までの戸除籍を揃えておくと、こういうときにも効果的と言えます)。

なお、最後の「名義変更や預金の相続」等の場合、各行政機関や金融機関等へ事前に手順や持ち物などしっかり確認されたほうが良いのは、間違いないところです。

② 法務局で遺言書を保管する

※遺言する人(遺言者)が、生きてる間にやることを書いてます

自筆で遺言書を作成したら、管轄の法務局(遺言書保管所)に「自筆証書遺言を保管してほしい」と電話で聞いてみましょう。その後、大抵の場合は、予約日時とともに、下記のように必要な持ち物を教えてくれます。当日は遺言書として大丈夫かどうかも、職員さんがチェックしてくれます。

※代理人や郵送での対応は2024年11月現在一切行っておりませんので、遺言者本人が病気等で直接赴けない場合、法務局保管は利用できませんのでご周知ください。

保管申請時に法務局へ持参するものの例

自筆証書遺言書

本人確認書類(官公庁から発行された顔写真付きの身分証明書)

本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等

遺言書が外国語により記載されているときは日本語による翻訳文

3,900円分の収入印紙(遺言書保管手数料)

申請書(こちらは、窓口に取りに行くか、ダウンロードしたものを印刷して記載します)

法務局で保管していた遺言書での相続手続き

※相続人が、遺言する人(遺言者)が、生きてる間に預けておいた遺言書を使いたいときにやることを書いてます

法務局で保管されている自筆証書遺言書は、遺言書保管所(窓口)または郵送で受け取ることができます(※正確には自筆証書遺言の原本をそのまま受け取るのではなく、「遺言書情報証明書」というものを受け取ります。実際の相続手続きに必要なのは、この「遺言書情報証明書」となります)。

相続開始後、法務局に保管をしていた遺言書で相続手続きをしたい場合は、まず管轄の法務局へ電話して「遺言者が亡くなったので、法務局で保管している遺言書が必要」と問合せてみましょう。

問い合わせると、概ね下記の一から六の書類等を準備するよう言われます。

一、遺言者の出生〜死亡までの戸除籍謄本(※生前に出生から死亡する前までの戸除籍を揃えておくと、こういうときにも効果的と言えます)

二、相続人全員の戸籍謄本

三、相続人全員の住民票

※一・二・三の全てを法定相続情報一覧図に代える事もできます。

四、申請者の身分証明証(顔写真付き:運転免許証、マイナンバーカードなど)

五、遺言書情報証明書の交付請求書(※相続手続きで、実際に銀行などに提出する証明書のこと)

※五については、郵送請求ならパソコンでダウンロードして印刷したものに必要事項記入して同封。保管所で直接受け取りなら、窓口にある同紙に記入して提出となります。ただし、窓口受取の場合は予約が必要です。お仕事などで忙しい方は郵送での受取も検討してみてください。

六、1400円分の収入印紙(五の証明書1通あたり:複数必要な場合は通数分必要)※郵送の場合はコンビニや郵便局で購入して同封、窓口であれば法務局内で買えます。

専門家目線で申し上げると

戸籍謄本や住民票の「束」のままだと、例えばA銀行で戸籍全てをチェックするのにその日に終わらない、B銀行でも同じように終わらない・・・いつまで経っても不動産の名義を変えられない・・・という事態も考えられますから、すべての窓口に法定相続情報一覧図を提出できるのが理想かと思います。

手順としては
亡くなった→戸除籍(できれば住民票や住民除票も)をすべて揃える→法務局で法定相続情報一覧図を20枚ほど取得する→法務局へ法定相続一覧図含め最初の書類を提出して遺言書情報証明書の交付を受ける

その後20枚取得したうちの残り19枚の法定相続情報一覧図・遺言書情報証明書を用い、法務局への不動産名義変更、各銀行・金融商品などの相続手続きを同時に行うのが効率的かと思います(やはり、生前に出生から死亡する前までの戸除籍を揃えておくと、こういうときにも効果的でしょう)。

なお、最後の「名義変更や預金の相続」等の場合、各行政機関や金融機関等へ事前に手順や持ち物などしっかり確認されたほうが良いのは、間違いないところです。

遺言書保管所(窓口)で受け取る場合は、最初に日時を予約してから、一から六の書類を持参・購入し、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)を提示し、本人確認を行い、遺言書情報証明書を受け取ります

郵送で受け取る場合は、一から六の書類を同封提出後、請求者の住民票上の住所に証明書が送付されます(予約は不要です)。

法務局で保管するメリット

主な特長は・・・

遺言書の紛失や改ざんを防ぐことができる
相続開始後、家庭裁判所での検認手続きが不要になる
相続人等に遺言書を保管していることをお知らせしてもらえる
全国どこの法務局でも遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付が受けられる
と言ったところです。

行方知れずの相続人がいる場合

遺言書を作成するのはいいが、行方知れずの相続人がいる。あまり内容を知られたくない相続人がいるなどの事情をお持ちの方も、中にはいらっしゃるでしょう。

こういった方が相続人の中にいる場合、自筆証書遺言だけではリカバー出来ない部分が多々ございます。

家庭裁判所での検認のときの不安

家庭裁判所の検認にしても、出頭する人は代表者一名でいいですが、出頭しないその他の相続人全員へも「通知」は行きます。このとき通知が届くべき住所を他の人が把握していないと通知そのものが送付できなくなります。戸籍や戸籍の附票を用いて最後の住所を確認することが出来ても、そこに本当に住んでいるのか?それが分からないまま通知がなされた後、何かしらの理由で宛名人が受け取ることなく家庭裁判所へ返送されてきたりすると・・・考えただけで少し面倒な対応が増えそうな印象を受けるのではないでしょうか。

各家庭裁判所も、転勤転属で同じ裁判官の方がずっといるというわけではなく、持ち回りです。人が変われば対応も変わることも多く、シンプルに言うとその時の裁判官のお考えで、相続人側の対応も随分と変わるようです。不在者財産管理人の選任申立や失踪宣告の申立てを行ってくださいとか、いろいろ助言されるのも珍しくないとか。

遺産分割協議での不安

仮に、複数の相続人がいるままで、自筆証書遺言すら遺さずにお亡くなりになると、遺産の手続きは「遺産分割協議(相続人全員で署名+実印での押印)」となります。この場合は誰が何を相続するかも決まっていないので、行方不明の相続人がいても、原則として全員の署名押印を施した遺産分割協議書を作成しなければなりません(※遺産分割協議書の作成につちえはここでは割愛します)。詳細は省略しますが、こちらも考えただけで土地や建物、金融商品や預貯金がどうなるのか不安になってくるのではないでしょうか。

したがって、そういった懸念事項がある場合は、自筆証書遺言ではなく、遺言公正証書の作成を真剣に考えるべきかと思います。

遺言公正証書とは

簡単に言うと、家庭裁判所での検認不要、法務局での保管も不要、もちろん遺産分割協議も不要。

公正証書の遺言内で財産を受け取ることになった相続人などが、公正証書遺言の正本・遺言者が死亡したことがわかる戸除籍、ご本人の戸籍謄本等を法務局や銀行に持っていけば、手続きがほぼ完了するというものです。

実は、生前に費用と手間をかけ相続後を楽にするのが遺言公正証書。生前は費用も手間もかけず、相続発生後に相続人が費用や手間をかけるのが自筆証書遺言、遺産分割協議とも言えます。生前でも、亡くなった後でも、同じような費用や手間がかかるのであれば・・・ここまでわかってくると、遺言を公正証書にしておく人が増えていて、特にお金持ちだからかどうかなどは、それほど関係ないこともお分かり頂けるかもしれません。

遺言公正証書に関心を持たれた方は、生前に同じ都道府県内にある公証役場に電話して「遺言を公正証書で作りたい」と問合せてみましょう。

ここには、遺言公正証書のリンクも貼っておきますので、よろしければ御覧ください。

さいごに

自筆証書遺言とは、遺言者自身が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。紙とペン、印鑑があれば作成でき、費用もかからないため、手軽に作成できます。まずはあなたが、自身の将来の相続について関心を持ち始めたこと、自筆で遺言書を書いてみようと行動に移そうとしていることは素晴らしいことです。保管方法や遺産分割協議、公正証書遺言との違いも見比べながら、試行錯誤してみてください。

 

 

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